福岡高等裁判所宮崎支部 昭和29年(う)598号・昭29年(う)597号 判決
弁護人作成名義にかかる控訴趣意書記載の控訴趣意第一点について。
しかし、原判示第一の(一)掲記の事実につき、原判決の挙示する証拠を綜合すれば、被告人等は共謀の上、原判示第一の(一)掲記の日時・場所において、原判決認定のとおり、松本完徳所有にかかる背広一着外衣類数点をそのまま持つて行けるようにして、鹿屋小学校炊事所内四畳半部屋の入口においていたことが認められるので、被告人等が物色した品物の内から右背広等を選び出し、右入口においたとき、既に、被告人等は右物品に対する他人の所持を侵したものであるとみるべきであるから、右被告人等の所為は、窃盗の既遂と認定しても何等妨げないものといわざるを得ない。されば、この点に関する原判決には、何等事実の誤認はないから、論旨は採用しがたい。
同第二点前段について。
所論に鑑み、原判示第一の(一)掲記の事実につき、原判決の挙示する証拠を調べてみれば、被告人両名が鹿屋小学校内において、窃盗をしようと共謀をした事実及び同校炊事所内四畳半の部屋において、松本完徳所有にかかる背広等を窃取した事実は、控訴趣意第一点において説示したとおりであるが、しかし、被告人吉見末男は、同校の先生からその犯行を発見せられるや、直ぐその場から逃走したので、同被告人は、その後において、相被告人吉岡実幸が、逮捕を免れるため、池崎利男等に対し、持つていたジヤツクナイフを同人等に突きつけ、同人等を脅迫した事実については、全然関知しなかつたばかりでなく、しかも、そのことについては、初めから全然予期しなかつたことが認められる。他に、右認定を覆すに足る何等の証拠もない。それで、被告人吉見末男の所為と相被告人吉岡実幸の所為とを同一に評価するわけにはゆかないから、被告人吉見末男に対しては、同被告人に犯意のあつた窃盗罪の既遂をもつて論ずべきが相当であつて、同被告人が予期しなかつた相被告人吉岡実幸の準強盗の所為に対しては、同被告人に準強盗の刑責を分担さすべき筋合のものではない。さすれば、原判決が、その挙示の証拠により、被告人吉見末男の所為を準強盗罪に問擬したのは、結局、事実を誤認したものであり、その誤認は、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、同被告人に対する原判決は破棄を免れない。この点の論旨は理由がある。
(裁判長裁判官 山下辰夫 裁判官 二見虎雄 裁判官 長友文士)